第109回薬剤師国家試験 理論病態 問154、157、166、167、185−195
問154−155
78歳女性。夫と 2人暮らしであるが、半年前から物の置き忘れやしまい忘れをするようになった。3ケ月前から誰もいない庭を指さして「子供たちが遊んでいる。」などと言うようになった。睡眠中に大声を出して、手足をばたつかせることがあるが、本人に自覚はない。心配した夫に連れられ病院を受診した。診察時、受け答えは良好であったが、歩行は小刻み様であった。日付や場所の見当識が一部曖昧であり、ミニメンタルステート検査は 30点満点中 23点であった。また、脳血流 SPECT により後頭葉の血流低下が認められた。
問154
この患者に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 前頭葉に著明な萎縮が生じている。
2 パーキンソン症状が認められる。
3 脳梗塞によって二次的に発症した可能性が高い。
4 幻視や REM 睡眠行動異常が認められる。
5 症状は階段状に悪化する。
2 パーキンソン症状が認められる。
4 幻視や REM 睡眠行動異常が認められる。
問157−158
37 歳女性。アレルギー疾患の既往歴なし。顔面に紅斑が出現したため、近医を受診し、全身性エリテマトーデス(SLE)と診断された。ステロイド療法が施 行され、病状は落ち着いた。副腎皮質ステロイド性薬の漸減中に、突然、上機嫌に なって多弁となったり、急に無表情になったり、「スマートフォンの使い方が分からなくなった。」と困惑して涙ぐんだりする症状が目立つようになった。血液検査の結果は以下のとおりである。
(検査値)
赤血球 400 × 104/μL、白血球 5,120/μL、血小板 20.8 × 104/μL、
血清クレアチニン 1.84 mg/dL、eGFR 32.8 mL/min/1.73 m2、
空腹時血糖 112 mg/dL、HbA1c 6.5%、抗核抗体(+)、尿タンパク( 2+)、 尿潜血(+)
問157
この患者に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 SLE はI型アレルギーによって発症した。
2 顔面の紅斑は鼻梁から頬にかけて一側性である。
3 副腎皮質ステロイド性薬の漸減中の症状から中枢神経ループスが疑われる。
4 血液検査から汎血球減少症が疑われる。
5 血液検査からループス腎炎が疑われる。
3 副腎皮質ステロイド性薬の漸減中の症状から中枢神経ループスが疑われる。
5 血液検査からループス腎炎が疑われる。
問165ー166
50 歳女性。 5 年前に近医にて高血圧を指摘され、アムロジピン 5 mg/日を服用していた。最近の血圧は 155/95 mmHg 程度と高値が持続しており、頭痛や脱力を自覚し今回受診した。二次性高血圧が疑われたため、腹部 CT 検査が実施されて左副腎に腫瘍を認めたが、血中コルチゾール値や血中カテコールアミン値の上昇は認めなかった。
問166
本症例で認められる血液検査所見として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 カリウム低値
2 カルシウム高値
3 LDL コレステロール高値
4 遊離チロキシン(FT4)高値
5 レニン活性低値
1 カリウム低値
5 レニン活性低値
問167−168
35 歳男性。献血時の検査でヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体陽性となり、HIV 感染症と診断された。
問167
この症例に対する治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 CD4 陽性リンパ球数が基準範囲内であっても、抗レトロウイルス療法が必要である。
2 抗レトロウイルス療法では、抗 HIV 薬の単剤で治療を開始する。
3 HIV–RNA 量が減少した場合には、抗 HIV 薬を休薬する。
4 免疫再構築症候群は、後天性免疫不全症候群(AIDS)や HIV 感染症の治療中にみられる炎症を主体とする病態である。
5 抗レトロウイルス療法を行っても、生命予後は改善しない。
1 CD4 陽性リンパ球数が基準範囲内であっても、抗レトロウイルス療法が必要である。
4 免疫再構築症候群は、後天性免疫不全症候群(AIDS)や HIV 感染症の治療中にみられる炎症を主体とする病態である。
問185
薬剤服用後に発症する偽膜性大腸炎に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 主な原因医薬品として、抗菌薬がある。
2 緑膿菌感染による大腸炎である場合が多い。
3 便秘が持続し、腸閉塞に至ることが多い。
4 治療薬として、メトロニダゾールやバンコマイシン塩酸塩が使用される。
5 難治性の場合は、インフリキシマブが用いられる。
1 主な原因医薬品として、抗菌薬がある。
4 治療薬として、メトロニダゾールやバンコマイシン塩酸塩が使用される。
問186
骨粗しょう症に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 閉経後は、骨吸収の相対的な低下により、骨量の減少をきたす。
2 典型的な X 線所見として、頭蓋骨の打ち抜き像がある。
3 骨代謝マーカーは、骨折リスクの予測に有用である。
4 閉経後骨粗しょう症の治療には、エストロゲンの補充療法を行う。
5 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)は、乳腺や子宮内膜に対してエストロゲン様作用を示す。
3 骨代謝マーカーは、骨折リスクの予測に有用である。
4 閉経後骨粗しょう症の治療には、エストロゲンの補充療法を行う。
問187
再生不良性貧血に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 血清鉄が増加する。
2 不飽和鉄結合能が増大する。
3 小球性低色素性貧血に分類される。
4 エリスロポエチン産生が亢進する。
5 血小板数は変化しない。
1 血清鉄が増加する。
4 エリスロポエチン産生が亢進する。
問188
72 歳男性。本態性高血圧症のために、処方 1 及び処方 2 を服用していた。最近、血圧が上昇したため、薬物による降圧療法を強化することになった。追加する治療薬として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
(処方 1 )
ニフェジピン徐放錠20mg 1回2錠(1日4錠)
1 日 2 回 朝夕食後 14 日分
(処方 2 )
テルミサルタン錠 40 mg 1回2錠(1日2錠)
1 日 1 回 朝食後 14 日分
1 アムロジピンベシル酸塩
2 アメジニウムメチル硫酸塩
3 シベンゾリンコハク酸塩
4 イルベサルタン
5 ドキサゾシンメシル酸塩
5 ドキサゾシンメシル酸塩
問189
間質性肺炎に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 閉塞性換気障害のために肺活量が減少する。
2 原因として最も頻度が高いのは、副腎皮質ステロイド性薬の副作用である。
3 乾性咳嗽が出現する。
4 胸部聴診で呼息時にブツブツという粗い断続性ラ音が聴取される。
5 特発性肺線維症に対しては、ニンテダニブエタンスルホン酸塩を投与することがある。
3 乾性咳嗽が出現する。
5 特発性肺線維症に対しては、ニンテダニブエタンスルホン酸塩を投与することがある。
問190
25 歳男性。身長 176 cm、体重 65 kg。20 歳の時に 1 型糖尿病を発症し、 1 日 4 回のインスリン皮下注射と血糖自己測定によるインスリン強化療法を行ってきた。最近の血液検査で HbA1c 値が 7.3%であったためインスリン治療の変更が計画された。
(使用中の薬剤)
インスリン アスパルト(遺伝子組換え)
朝食直前 10 単位、昼食直前 7 単位、夕食直前 9 単位
インスリン デグルデク(遺伝子組換え)
就寝前 14 単位

インスリン注射量の変更に関して適切なのはどれか。2つ選べ。
1 朝食直前のインスリン注射量を増量する。
2 朝食直前のインスリン注射量を減量する。
3 昼食直前のインスリン注射量を増量する。
4 夕食直前のインスリン注射量を増量する。
5 就寝前のインスリン注射量を減量する。
3 昼食直前のインスリン注射量を増量する。
4 夕食直前のインスリン注射量を増量する。
問191
白内障に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 硝子体が混濁する疾患の総称である。
2 先天性と後天性とに大別できる。
3 副腎皮質ステロイド性薬の長期投与により、発症を抑制できる。
4 治療に用いる点眼薬として、ピレノキシンとグルタチオンがある。
5 加齢による白内障では、点眼薬の投与により混濁が消失する。
2 先天性と後天性とに大別できる。
4 治療に用いる点眼薬として、ピレノキシンとグルタチオンがある。
問192
白癬及びその治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 足白癬の原因で最も頻度の高いのは、カンジダ・アルビカンスである。
2 足白癬への外用薬による治療は、 1 週間で中止する。
3 爪白癬の治療には、内服薬は用いられない。
4 イトラコナゾール錠は、妊婦又は妊娠の可能性のある女性に禁忌である。
5 テルビナフィン塩酸塩錠の副作用として、重篤な肝障害がある。
4 イトラコナゾール錠は、妊婦又は妊娠の可能性のある女性に禁忌である。
5 テルビナフィン塩酸塩錠の副作用として、重篤な肝障害がある。
問193
多発性骨髄腫の病態に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 T 細胞が腫瘍化する。
2 腫瘍細胞が産生する M タンパク質は、単クローン性の免疫グロブリンである。
3 アミロイドタンパク質が臓器や組織に沈着し、臓器障害をきたす。
4 骨髄細胞にフィラデルフィア染色体を認める。
5 脾腫が頻発する。
2 腫瘍細胞が産生する M タンパク質は、単クローン性の免疫グロブリンである。
3 アミロイドタンパク質が臓器や組織に沈着し、臓器障害をきたす。
問194
ある疾患の予防薬である新薬 X の評価を行うために調査を行ったところ、プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験のデータが得られ、新薬 X の有効性が示されていた(下表)。この結果から算出できる新薬 X の治療必要数(NNT)が 20 であるとき、表の(A)に入る数値として適切なのはどれか。1つ選べ。

1 10
2 20
3 30
4 40
5 50
4 40
問195
55 歳男性。会社員。26 歳時に結婚し、子供が二人いる。元来まじめな性格で、会社では昼夜を問わず仕事をしていた。 2 年前に昇進し、一層仕事に励んでいた。今年に入り、朝早く目が覚めてその後眠れないようになった。また、便秘がちになり食欲が低下したため、近医の消化器内科を受診したが軽快しなかった。その後も体調不良が続き、これらの症状に加え、立ちくらみや耳鳴りが出現したため、内科を転々とし精査を受けたが、器質的異常は認められなかった。やがて、一日中身体の不調を自覚するようになり、業務中にミスが増えた。「こんなダメな自分と一緒にいても未来がないので離婚しよう。」と、妻に頻回に言うようになった。趣味のゴルフへの興味もなくなり、休日は家でぼんやり過ごすようになったため、心配した妻と一緒に精神科を受診し、うつ病と診断された。
この患者の病態と治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 微小妄想が認められる。
2 昏迷が生じている。
3 記憶障害を伴う可能性が高い。
4 治療では、十分な休養が推奨される。
5 薬物療法では、初回から 2 剤以上の抗うつ薬を併用する。
1 微小妄想が認められる。
4 治療では、十分な休養が推奨される。
まとめ
第109回薬剤師国家試験理論病態・薬物治療でした。
良ければほかの年も見てみてね。