第106回薬剤師国家試験 理論薬理問151-169
問151
細胞膜受容体に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 グリシン受容体は、 7 回膜貫通型で、受容体の刺激によりアデニル酸シクラーゼを抑制する。
2 ATP P2X 受容体は、イオンチャネル内蔵型で、ATP が結合すると細胞内に Na+ と Ca2+ が流入する。
3 ニコチン性アセチルコリン受容体は、G タンパク質共役型で、アセチルコリンが結合すると、イノシトール代謝回転が促進される。
4 上皮増殖因子(EGF)受容体は、 1 回膜貫通型で、活性化されるとチロシン残基の自己リン酸化が起こる。
5 アンジオテンシンII AT1 受容体は、イオンチャネル内蔵型で、アンジオテンシンが結合すると細胞内に Cl– が流入する。
2 ATP P2X 受容体は、イオンチャネル内蔵型で、ATP が結合すると細胞内に Na+ と Ca2+ が流入する。
4 上皮増殖因子(EGF)受容体は、 1 回膜貫通型で、活性化されるとチロシン残基の自己リン酸化が起こる。
問152
副交感神経系に作用する薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選 べ。
1 ジスチグミンは、コリンエステラーゼを阻害して瞳孔括約筋を弛緩させる。
2 セビメリンは、アセチルコリン M2 受容体を刺激して心収縮力を増大させる。
3 ベタネコールは、アセチルコリン M3 受容体を刺激して胃腸蠕動運動を亢進させる。
4 メペンゾラートは、アセチルコリン M1 受容体を選択的に刺激して胃酸分泌を抑制する。
5 プロピベリンは、アセチルコリン M3 受容体と Ca2+ チャネルを遮断して膀胱排尿筋の収縮を抑制する。
3 ベタネコールは、アセチルコリン M3 受容体を刺激して胃腸蠕動運動を亢進させる。
5 プロピベリンは、アセチルコリン M3 受容体と Ca2+ チャネルを遮断して膀胱排尿筋の収縮を抑制する。
問153-154
26 歳女性。以下の処方箋を持って来局した。患者からの聞き取りによると、「会社の部署の異動により、寝付けなくなった。眠りにつくことができれば朝まで眠れるが、寝付けないときには、ついスマートフォンで動画を見てしまう。寝坊するのが怖くて眠れない日もある。他に病気はない。」という。
(処方)
ラメルテオン錠 8 mg 1 回 1 錠( 1 日 1 錠)
1 日 1 回 就寝前 14 日分
問153
処方されたラメルテオンに関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 視交叉上核のオレキシン受容体を遮断して、睡眠覚醒のリズムのずれを改善する。
2 Gs タンパク質と共役する受容体を刺激して、細胞内サイクリック AMP(cAMP) レベルを増加させる。
3 Cl– チャネルを内蔵する受容体を刺激して、Cl– を細胞内に流入させる。
4 メラトニン MT1 及び MT2 受容体を刺激する。
5 上行性脳幹網様体賦活系に作用して覚醒レベルを引き下げる。
4 メラトニン MT1 及び MT2 受容体を刺激する。
問154(病態)
この患者の睡眠障害の型として考えられるのはどれか。1つ選べ。
1 入眠障害
2 中途覚醒
3 熟眠障害
4 早朝覚醒
5 過眠障害
1 入眠障害
問155
脳血管障害とその後遺症の治療に用いられる薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 バクロフェンは、γ–アミノ酪酸 GABAA 受容体を刺激することで、脳血管障害に伴う筋痙縮を抑制する。
2 ファスジルは、Rho キナーゼを阻害してミオシン軽鎖の脱リン酸化を阻害することで、くも膜下出血術後の脳血管れん縮を抑制する。
3 オザグレルは、プロスタノイド TP 受容体を遮断することで、脳血流量の低下を抑制する。
4 イフェンプロジルは、アドレナリン α 受容体を刺激することで、脳梗塞後遺症に伴うめまいを改善する。
5 エダラボンは、フリーラジカルを消去して脂質過酸化を抑制することで、脳梗塞急性期において脳保護作用を示す。
5 エダラボンは、フリーラジカルを消去して脂質過酸化を抑制することで、脳梗塞急性期において脳保護作用を示す。
問156-157
40歳女性。 3 年前に多発性関節炎を認め外来受診したところ、関節リウマチと診断された。メトトレキサートとプレドニゾロンによる治療が開始され、徐々に増量することにより症状の改善を認めていたが、最近、関節痛が再燃した。
問156
関節リウマチ治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 サラゾスルファピリジンは、T 細胞における炎症性サイトカインの産生を抑制する。
2 ペニシラミンは、分子内に 2 個の SH基を有し、リウマトイド因子のジスルフィド結合の解離を抑制する。
3 エタネルセプトは、ヤヌスキナーゼを阻害して、サイトカイン受容体を介した細胞内情報伝達を阻害する。
4 インフリキシマブは、キメラ型抗ヒト TNF– αモノクローナル抗体で、TNF– αの受容体への結合を阻害する。
5 トシリズマブは、ヒト型可溶性 TNF II型受容体–Fc 融合タンパク質で、TNFの作用を抑制する。
1 サラゾスルファピリジンは、T 細胞における炎症性サイトカインの産生を抑制する。
4 インフリキシマブは、キメラ型抗ヒト TNF– αモノクローナル抗体で、TNF– αの受容体への結合を阻害する。
問157(病態)
再燃時に、値が上昇していると考えられる検査項目はどれか。2つ選べ。
1 CEA
2 CPK
3 KL–6
4 MMP3
5 白血球数
4 MMP3
5 白血球数
問158
骨粗しょう症治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 テリパラチドは、遺伝子組換えヒト副甲状腺ホルモン(1–34)製剤であり、間欠投与で破骨細胞による骨吸収を抑制する。
2 リセドロン酸は、メバロン酸経路のファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害することで、破骨細胞による骨吸収を抑制する。
3 ラロキシフェンは、骨組織のエストロゲン受容体を遮断することで、閉経後の骨代謝回転を改善する。
4 エルカトニンは、骨芽細胞の副甲状腺ホルモン受容体を刺激することで、骨芽細胞による骨形成を促進する。
5 デノスマブは、RANKL(NF–κB 活性化受容体リガンド)を標的とするヒト型 IgG2 モノクローナル抗体で、RANKL による破骨細胞の形成を抑制する。
2 リセドロン酸は、メバロン酸経路のファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害することで、破骨細胞による骨吸収を抑制する。
5 デノスマブは、RANKL(NF–κB 活性化受容体リガンド)を標的とするヒト型 IgG2 モノクローナル抗体で、RANKL による破骨細胞の形成を抑制する。
問159
心不全治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 メチルジゴキシンは、Na+, K+–ATPase を阻害して、心筋細胞内 Ca2+ 濃度を上昇させて陽性変力作用を示す。
2 リシノプリルは、アンジオテンシンIIの分解を阻害して、心筋のリモデリングを抑制する。
3 コルホルシンダロパートは、サイクリック AMP(cAMP)誘導体で、細胞内でcAMP に変換されて心筋収縮力を増強する。
4 ピモベンダンは、トロポニン C の Ca2+ 感受性を増大させるとともに、ホスホジエステラーゼIIIを阻害して、強心作用を示す。
5 カルペリチドは、グアニル酸シクラーゼ内蔵型受容体を遮断して、心臓の前負荷及び後負荷を軽減させる。
1 メチルジゴキシンは、Na+, K+–ATPase を阻害して、心筋細胞内 Ca2+ 濃度を上昇させて陽性変力作用を示す。
4 ピモベンダンは、トロポニン C の Ca2+ 感受性を増大させるとともに、ホスホジエステラーゼIIIを阻害して、強心作用を示す。
問160-161
53歳男性。身長 170 cm、体重 90 kg。喫煙歴あり(15 本 / 日)、機会飲酒。 数年前から健康診断で血圧が高いことを指摘され、本人も自覚していたが放置していた。最近、軽度のめまい感が頻発するので受診した。来院時の血圧は 150/95 mmHg、心電図検査の胸部誘導で SV1 + RV5 = 4.0 mV。胸部 X 線検査で心胸郭(CTR)56%。血漿レニン活性、血漿アルドステロン濃度、血中カテコールアミン濃度はいずれも正常、HbA1c 5.8%(NGSP 値)、TG(トリグリセリド )140 mg/dL、LDL–C 160 mg/dL、HDL–C 40 mg/dL、 尿タンパク(-) で あった。 2 回目の受診時にシルニジピンとフルバスタチンによる治療が開始され た。
問160
シルニジピンに関する記述として正しいのはどれか。2つ選べ。
1 アンジオテンシンII AT1 受容体を遮断して、血圧を低下させる。
2 N 型 Ca2+ チャネルを遮断して、交感神経終末からのノルアドレナリンの遊離を抑制する。
3 L 型 Ca2+ チャネルを遮断して、血管平滑筋を弛緩させる。
4 アドレナリン α1 受容体を遮断して、末梢血管抵抗を低下させる。
5 アドレナリン β1 受容体を遮断して、レニン分泌を抑制する。
2 N 型 Ca2+ チャネルを遮断して、交感神経終末からのノルアドレナリンの遊離を抑制する。
3 L 型 Ca2+ チャネルを遮断して、血管平滑筋を弛緩させる。
問161(病態)
この患者の病態に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 家庭では、血圧が正常である。
2 脂質異常症による二次性高血圧である。
3 病態の改善には肥満度を下げることが推奨される。
4 病態の改善にはカリウム制限を厳密に行う必要がある。
5 心肥大がある。
3 病態の改善には肥満度を下げることが推奨される。
5 心肥大がある。
問162
抗血栓薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 ダルテパリンは、アンチトロンビンと複合体を形成して第 Xa 因子よりもトロンビンを強く阻害する。
2 アルガトロバンは、アンチトロンビン非依存的にトロンビンのセリンプロテアーゼ活性を可逆的に阻害する。
3 ウロキナーゼは、フィブリンに対する親和性が高く、血栓上でプラスミノーゲンをプラスミンに変換する。
4 トロンボモデュリン アルファは、プロトロンビンに結合してプロテイン C を活性化する。
5 チカグレロルは、ADP 結合部位とは異なる部位に結合して ADP P2Y12 受容体を選択的かつ可逆的に遮断する。
2 アルガトロバンは、アンチトロンビン非依存的にトロンビンのセリンプロテアーゼ活性を可逆的に阻害する。
5 チカグレロルは、ADP 結合部位とは異なる部位に結合して ADP P2Y12 受容体を選択的かつ可逆的に遮断する。
問163
呼吸器系に作用する薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 オキシメテバノールは、アドレナリン β2 受容体を刺激することで、気管支平滑筋を弛緩させる。
2 カルボシステインは、ムコタンパク質中のジスルフィド(S–S)結合を開裂することで、痰の粘性を低下させる。
3 ジメモルファンは、延髄の咳中枢を抑制することで、咳反射を抑制する。
4 ブロムヘキシンは、アンブロキソールの活性代謝産物で、肺サーファクタントの分泌を促進する。
5 ジプロフィリンは、ホスホジエステラーゼを阻害してサイクリック AMP (cAMP)濃度を増加させることで、気管支平滑筋を弛緩させる。
3 ジメモルファンは、延髄の咳中枢を抑制することで、咳反射を抑制する。
5 ジプロフィリンは、ホスホジエステラーゼを阻害してサイクリック AMP (cAMP)濃度を増加させることで、気管支平滑筋を弛緩させる。
問164
消化器系に作用する薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 ナファモスタットは、外分泌腺から分泌された消化酵素を阻害して、膵臓の自己消化を抑制する。
2 ウルソデオキシコール酸は、カテコール–O–メチルトランスフェラーゼ (COMT)を阻害して、Oddi 括約筋を弛緩させ、胆汁分泌を抑制する。
3 アスナプレビルは、C型肝炎ウイルスの NS5A 複製複合体を阻害して、抗ウイルス活性を示す。
4 ペグインターフェロン アルファ–2αは、免疫細胞を活性化して、ウイルス感染細胞を傷害する作用により、B型及び C型肝炎ウイルスの増殖を抑制する。
5 エンテカビルは、ウイルスの増殖に必要な NS3/4A プロテアーゼを阻害して、B型肝炎ウイルスの増殖を抑制する。
1 ナファモスタットは、外分泌腺から分泌された消化酵素を阻害して、膵臓の自己消化を抑制する。
4 ペグインターフェロン アルファ–2αは、免疫細胞を活性化して、ウイルス感染細胞を傷害する作用により、B型及び C型肝炎ウイルスの増殖を抑制する。
問165
高尿酸血症及び痛風の治療に用いられる薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 トピロキソスタットは、プリン骨格を有し、競合的にキサンチンオキシダーゼを阻害する。
2 ブコロームは、尿酸排泄促進作用と抗炎症作用を併せもつ。
3 クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合剤は、尿の pH を上昇させることで尿路結石の形成を抑制する。
4 ベンズブロマロンは、尿細管における尿酸の再吸収と分泌の両方を阻害することで、尿酸排泄を抑制する。
5 コルヒチンは、尿酸オキシダーゼを活性化することで、尿酸の分解を促進する。
2 ブコロームは、尿酸排泄促進作用と抗炎症作用を併せもつ。
3 クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合剤は、尿の pH を上昇させることで尿路結石の形成を抑制する。
問166-167
35 歳男性。身長 173 cm、体重 85 kg。父親が糖尿病。既往歴なし。喫煙歴なし。機会飲酒。会社事務職で日頃より運動不足であり、毎日 1 L 以上の甘い清涼飲料水を飲用していた。この 1 年間で体重が 3 kg 増加したが、ここ数ヶ月は体重の減少を自覚している。 7 日前より全身倦怠感、口渇及び多尿を認めたため外来受診した。受診時の意識は清明であり、血糖値 480 mg/dL、HbA1c 11.0%(NGSP 値)、尿糖(4+)、尿蛋白(-)、尿中ケトン体( 3+)であった。
問166
血糖降下作用を有する薬物の作用機序に関する記述のうち、正しいのはどれか。 2つ選べ。
1 メトホルミンは、ジペプチジルペプチダーゼ–4(DPP–4)を阻害することで、血中インクレチン濃度を上昇させる。
2 カナグリフロジンは、ナトリウム–グルコース共輸送体 2 (SGLT2)を阻害することで、腎尿細管におけるグルコースの再吸収を抑制する。
3 アログリプチンは、AMP 活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化することで、肝臓での糖新生を抑制する。
4 インスリン デグルデクは、骨格筋や脂肪組織におけるグルコースの細胞内取り込みを促進する。
5 リキシセナチドは、グルカゴン様ペプチド–1(GLP–1)受容体を刺激すること で、インスリン及びグルカゴン分泌を促進する。
2 カナグリフロジンは、ナトリウム–グルコース共輸送体 2 (SGLT2)を阻害することで、腎尿細管におけるグルコースの再吸収を抑制する。
4 インスリン デグルデクは、骨格筋や脂肪組織におけるグルコースの細胞内取り込みを促進する。
問167(病態)
この患者で、血中濃度が顕著に上昇していると考えられるのはどれか。2つ選べ。
1 3–ヒドロキシ酪酸
2 アセト酢酸
3 γ–アミノ酪酸
4 水酸化物イオン
5 ナトリウムイオン
1 3–ヒドロキシ酪酸
2 アセト酢酸
問168
内分泌系に作用する薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 カベルゴリンは、ドパミン D2 受容体を遮断することで、下垂体前葉からのプロラクチンの分泌を抑制する。
2 プロチレリンは、下垂体前葉に作用することで、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌を促進する。
3 デスモプレシンは、バソプレシン V2 受容体を遮断することで、腎集合管における水の再吸収を阻害する。
4 リオチロニンは、甲状腺のペルオキシダーゼを阻害することで、甲状腺ホルモンの合成を抑制する。
5 メチラポンは、11 β–ヒドロキシラーゼを阻害することで、コルチゾールの産生を抑制する。
2 プロチレリンは、下垂体前葉に作用することで、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌を促進する。
5 メチラポンは、11 β–ヒドロキシラーゼを阻害することで、コルチゾールの産生を抑制する。
問169
抗ウイルス薬の作用機序に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 エムトリシタビンは、細胞内で三リン酸化体となり、DNA 依存性 RNA ポリメラーゼを阻害する。
2 ラルテグラビルは、HIV プロテアーゼを阻害する。
3 リバビリンは、細胞内で三リン酸化体となり、RNA 依存性 DNA ポリメラーゼを阻害する。
4 ファビピラビルは、細胞内でリボシル三リン酸体となり、RNA依存性 RNAポリメラーゼを阻害する。
5 バロキサビル マルボキシルは、体内で活性体に変換されて、キャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害する。
4 ファビピラビルは、細胞内でリボシル三リン酸体となり、RNA依存性 RNAポリメラーゼを阻害する。
5 バロキサビル マルボキシルは、体内で活性体に変換されて、キャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害する。
まとめ
第106回薬剤師国家試験の理論薬理でした.
病態との複合問題が増えましたね.
よければ他の年度も見てみてください