第109回薬剤師国家試験理論薬剤問170−184

問170

下図はイトラコナゾールカプセル 200 mg を健常人男性(21~28 歳)12 名に経口投与した際の血中濃度(平均値)の時間推移を示す。イトラコナゾールの最高血中濃度はファモチジンとともに服用した場合、53%に減少した。イトラコナゾールの吸収過程におけるファモチジンとの相互作用及びその回避法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 イトラコナゾールがファモチジンと難溶性のキレートを形成するため、吸収が低下する。
2 ファモチジンが P-糖タンパク質によるイトラコナゾールの分泌を阻害するため、吸収が低下する。
3 ファモチジンの作用により胃内 pH が上昇し、イトラコナゾールの溶解性が低下するため、吸収が低下する。
4 ファモチジンの代替薬としてオメプラゾールを検討する。
5 イトラコナゾール製剤として経口液剤を検討する。

3 ファモチジンの作用により胃内 pH が上昇し、イトラコナゾールの溶解性が低下するため、吸収が低下する。
5 イトラコナゾール製剤として経口液剤を検討する。

問171

経口投与する薬物について、食事により量的バイオアベイラビリティは変わらないが、速度的バイオアベイラビリティが低下するのはどれか。2つ選べ。

1 アセトアミノフェン
2 セファクロル
3 リボフラビン
4 フェニトイン
5 インドメタシン ファルネシル

1 アセトアミノフェン
2 セファクロル

問172

線形 1‐コンパートメントモデルに従い、肝代謝と腎排泄によってのみ体内から消失する薬物Aを、ある患者に急速静注したときの体内動態データを以下に示す。
この患者の糸球体ろ過速度(GFR)を 120 mL/min としたとき、薬物Aの血漿タンパク非結合率に最も近い値はどれか。1つ選べ。ただし、薬物Aは腎尿細管で分泌・再吸収を受けず、血漿タンパク非結合形のみが糸球体でろ過されるものとする。

1 0.02
2 0.04
3 0.06
4 0.08
5 0.10

4 0.08

問173

薬物のみかけの分布容積とその変動に関与する血漿タンパク結合に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 みかけの分布容積は、体内薬物量と血漿中薬物濃度の平衡定数として定義される。
2 特定の臓器や細胞内小器官(核やリソソーム、ミトコンドリアなど)に分布する薬物は、体重 1 kg あたりの分布容積が 10 L を越えることがある。
3 脂溶性の高い薬物の分布容積は加齢に伴って減少する。
4 血漿タンパク結合率が高い薬物のみかけの分布容積は体内水分量とほぼ等しい。
5 タンパク非結合型薬物の濃度は、定常状態において血漿中と組織間隙液中との間でほぼ等しい。

2 特定の臓器や細胞内小器官(核やリソソーム、ミトコンドリアなど)に分布する薬物は、体重 1 kg あたりの分布容積が 10 L を越えることがある。
5 タンパク非結合型薬物の濃度は、定常状態において血漿中と組織間隙液中との間でほぼ等しい。

問174

薬物代謝酵素の遺伝子多型に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 CYP2C19 の遺伝子多型によってオメプラゾールの血中濃度時間曲線下面積(AUC)は変化するが、代謝物の AUC は変化しない。
2 CYP2D6 の遺伝子多型が関与するイミプラミンの poor metabolizer(PM)では、活性代謝物の血中濃度が高い。
3 アザチオプリンを使用する前には、UDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)の遺伝子多型の診断が行われている。
4 N-アセチル転移酵素(NAT2)には遺伝子多型が存在し、日本人では約 10%がイソニアジドのアセチル化反応速度が速い群に属する。
5 アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)は PM の頻度に人種差があり、白人と比べて日本人では PM の出現率が高い。

2 CYP2D6 の遺伝子多型が関与するイミプラミンの poor metabolizer(PM)では、活性代謝物の血中濃度が高い。
5 アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)は PM の頻度に人種差があり、白人と比べて日本人では PM の出現率が高い。

問175

下表には薬物の肝抽出率及び血漿タンパク結合率を示す。これら 3 種の薬物の体内動態の変動に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 ニカルジピンの肝クリアランスは、肝血流量による影響を受けない。
2 ニカルジピンの定常状態における非結合形薬物濃度は、肝血流量が一定であれば、血漿タンパク結合率の変動による影響を受けない。
3 フェニトインとテオフィリンの肝クリアランスは、いずれも肝固有クリアランスの変動の影響を受けやすい。
4 血漿タンパク質の減少による肝クリアランスへの影響は、フェニトインよりテオフィリンの方が大きい。
5 フェニトインとテオフィリンの定常状態における非結合形薬物濃度は、肝固有クリアランスが一定であれば、血漿タンパク結合率の変動による影響を受けない。

3 フェニトインとテオフィリンの肝クリアランスは、いずれも肝固有クリアランスの変動の影響を受けやすい。
5 フェニトインとテオフィリンの定常状態における非結合形薬物濃度は、肝固有クリアランスが一定であれば、血漿タンパク結合率の変動による影響を受けない。

問176

TDM の実施が望ましい薬物の性質として、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 有効血中濃度の範囲が広い。
2 体内動態の個人差が小さい。
3 薬物相互作用を受ける可能性が低い。
4 体内動態に非線形性が認められる。
5 副作用と対象疾患の症状の区別が難しい。

4 体内動態に非線形性が認められる。
5 副作用と対象疾患の症状の区別が難しい。

問177‐178

抗悪性腫瘍薬であるイリノテカンはプロドラッグである。この薬物の製剤と代謝に関する以下の問に答えよ。

問177

イリノテカン塩酸塩水和物を有効成分とするオニバイド点滴静注に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。なお、本製剤は以下の添加物を含む。

添加物
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、コレステロール、
N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール-2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンナトリウム塩、
4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸

1 イリノテカンをポリエチレングリコール誘導体で可溶化した製剤である。
2 ポリエチレングリコールで表面が修飾されたリポソーム製剤である。
3 能動的ターゲティングにより腫瘍に集積する。
4 細網内皮系を回避することにより血中に滞留する。
5 製剤中に含まれる微粒子は 150μm 程度である。

2 ポリエチレングリコールで表面が修飾されたリポソーム製剤である。
4 細網内皮系を回避することにより血中に滞留する。

問178

イリノテカンは酵素(ア)によって活性代謝物(イ)に変換され、さらに酵素(ウ)によって代謝物(エ)に変換され不活化される。(ア)の酵素及び(イ)の構造式、(ウ)の酵素及び(エ)の構造式のそれぞれの組合せとして、正しいのはどれか。1つ選べ。

3

問179

2種類の粉体A及びBの粉体層について、図 1 に示すように、種々の垂直応力(σ)を加えた状態で可動セルを水平方向に引っ張ることでせん断試験を行った。得られたせん断応力(τ)の値を σ に対してプロットした結果を図 2 に示す。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、τ と σ の間にはクーロンの式が成立するものとする。
 クーロンの式 τ = μ・σ + C
 μ:内部摩擦係数、C:付着力(いずれも定数)

1 粉体Aは粉体Bよりも安息角が大きい。
2 粉体Aを造粒するとグラフの傾きが大きくなる。
3 粉体Bは粉体Aよりも付着力が強い。
4 粉体Bに滑沢剤を適量添加すると内部摩擦係数が大きくなる。
5 粉体Bは粉体Aよりもオリフィスからの流出速度が大きい。

1 粉体Aは粉体Bよりも安息角が大きい。
5 粉体Bは粉体Aよりもオリフィスからの流出速度が大きい。

問180

固体薬物Aを S = 3 cm2 の円盤状に圧縮し、回転円盤法で 37 ℃において溶解実験を行った。固体薬物Aの溶解速度は( ₁ )の式に従い、試験中 S は変化しないものとする。t = 0 のとき C = 0 、11 分後の薬物Aの濃度が CS/2 であるとき、固体薬物Aのみかけの溶解速度定数 k(min-1・cm-2)に最も近い値はどれか。1つ選べ。ただし、ln 2 = 0.693 とする。
 dC/dt = kSCS – C)  …( ₁ )
 dC/dt :溶解速度、k:みかけの溶解速度定数、S:有効表面積
 CS:薬物の溶解度、C:時間 t における溶液中の薬物濃度
1 0.021
2 0.033
3 0.063
4 0.077
5 0.099

1 0.021

問181

薬物の溶解性の改善に用いる添加剤とその溶解性改善の機構との組合せのうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

添加剤(溶解性改善の機構)
1 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(可溶性塩の形成)
2 ヒドロキシプロピルメチルセルロース(固体分散体形成)
3 ポリビニルピロリドン(自己乳化)
4 エチレンジアミン(ミセル内取り込み)
5 エタノール(コソルベンシー) 

2 ヒドロキシプロピルメチルセルロース(固体分散体形成)
5 エタノール(コソルベンシー) 

問182

バイオ医薬品の微粒子製剤の水への分散性を、ゼータ電位と平均粒子径から評価した。下図の異なる pH における結果に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、一次粒子の粒子径は pH により変化せず、温度は一定とする。
また、粒度分布は一峰性で十分小さく、粒子の凝集は可逆的とする。

1 pH 2 で分散粒子は正に帯電している。
2 pH 5 付近で最も凝集性が高い。
3 pH 6 付近で粒子表面は電気的に中性である。
4 pH 8 以上で粒子は凝析している。
5 塩を加えることで pH によらず分散性を改善できる。

1 pH 2 で分散粒子は正に帯電している。
2 pH 5 付近で最も凝集性が高い。

問183

 下図は湿式顆粒圧縮法の製造工程である。A、Bの単位操作で使用する装置の組合せのうち、正しいのはどれか。1つ選べ。

3

問184

図 1 に示すニフェジピン徐放錠を 8分割又は分割せずに、 1錠分をヒトに経口投与したときの血漿中ニフェジピン濃度の推移を図 2 に示す。この錠剤に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 スパンタブ型の錠剤である。
2 8分割した錠剤の血中濃度推移はAである。
3 外層部は徐放性マトリックスである。
4 内核錠は徐放性コーティングされている。
5 錠剤全体が腸溶性コーティングされている。

2 8分割した錠剤の血中濃度推移はAである。
3 外層部は徐放性マトリックスである。

まとめ

第109回薬剤師国家試験の理論薬剤でした。

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プロフィール

おれんじめろんぱん🍊
薬剤師ごねんめ。保育士。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。
薬局薬剤師として日々奮闘しています。
好きなものは文具とディズニー🏰最近はイラストも描いてます。
名前の由来は学生時代によく勉強していたパン屋の好きなパンです🍞